社会福祉法人会計基準の構成と計算書類
社会福祉法人会計基準とは?
省令や区分、作成する計算書類についてご紹介しております。
すべての社会福祉法人は、定められた会計上のルールに従い、会計処理を行います。
この会計上のルールを“社会福祉法人会計基準”といいます。高い公益性を持つ社会福祉法人が、経営状況を分析し、財務状況などの情報を公開することを目的とされています。(社会福祉法第45条の23)
社会福祉法人会計基準は、一般的な企業会計基準とは異なり、独特な会計処理方法も多く、専門性が高い会計基準といえます。
構成
社会福祉法人会計基準は、「会計基準省令」と一般に公正妥当と認められる社会福祉法人会計の慣行を記載した通知(「運用上の取扱い」、「運用上の留意事項」)によって構成されています。
社会福祉法人会計基準省令
• 会計基準の目的や一般原則等、会計ルールの基本原則を定めるもの。
• 計算書類の様式、勘定科目を規定
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の取扱いについて(局長通知)
• 基準省令の解説
• 附属明細書及び財産目録の様式を規定
社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について(課長通知)
• 基準省令及び運用上の留意事項では定めていない一般に公正妥当と認められる社会福祉 法人会計の慣行
• 各勘定科目の説明を規定
厚生労働省:社会福祉法人会計基準
区分
社会福祉
事業
社会福祉法人
公益事業
収益事業
A拠点
B拠点
C拠点
D拠点
E拠点
F拠点
A事業
B事業
C事業
D事業
法人
事業区分
拠点区分
サービス区分
上記の図のように社会福祉法人は、実施事業に応じて、事業区分、拠点区分、サービス区分の3つに分類されます。
拠点区分とは
一体として運営される施設、事業所または事務所です。
予算管理の単位であり、財務書類作成の単位でもあります。(例:○○保育園)
サービス区分とは
その拠点で実施される事業内容及び法令の要請等に応じて設けられた区分です。
同一拠点内に複数の事業がなければ、サービス区分は設けられません。
(例:A保育園に、保育所と一時預かり事業がある場合)
A保育園
拠点区分
保育所
一時預かり事業
サービス区分
計算書類
厚生労働省 「社会福祉法人会計基準の構成と作成する書類等について」より
社会福祉法人は、法人全体、事業区分別、拠点区分別に計算書類を作成することとされています。
計算書類とは、資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表です。
作成する計算書類(財務諸表)
資金収支計算書・・・第一号
事業活動計算書・・・第二号
貸借対照表・・・第三号
様式
法人全体・・・第一様式
法人全体内の「事業区分の内訳」(事業区分別)・・第二様式
事業区分内の「拠点区分の内訳」(拠点区分別)・・第三様式
拠点区分ごとの計算書類・・・第四様式
場合によっては省略可能
計算書類の名称は、上記の第〇号と様式を合わせて表記されます。
例) 法人全体の資金収支計算書 → 第一号第一様式
拠点区分の貸借対照表 →第三号第四様式
資金収支計算書
収入
事業活動資金収支差額
支出
収入
支出
施設整備等資金収支差額
その他の活動資金収支差額
収入
支出
当期資金資金収支差額合計
前期末支払資金残高
当期末支払資金残高
事業活動による収支
施設整備等による収支
その他の活動による収支
収入ー支出
貸借対照表から計算される
”支払資金”と一致
資金収支計算書は、支払資金の増減を明らかにすることを目的とされています。
「事業活動による収支」・「設備整備等による収支」・「その他の活動による収支」の3つの区分に分かれており、
それぞれの収入から支出を引いたものを資金収支差額、
事業活動資金収支差額+施設整備等資金収支差額+その他の活動資金収支差額=当期資金収支差額合計と言います。
実際の資金収支計算書は、予算と実績を対比して表示されるようになっています。
企業会計の「キャッシュフロー計算書」に似ています。
厚生労働省:社会福祉法人会計基準
第二節参照
事業活動計算書
サービズ活動外
増減の部
収益
サービス活動外増減差額
費用
経常増減差額
特別増減の部
収益
特別増減差額差額
費用
当期活動増減差額
繰越活動
増減差額の部
前期繰越活動増減差額
当期末繰越活動増減差額
次期繰越活動増減差額
サービズ活動
増減の部
収益
サービス活動増減差額
費用
収益ー費用
1年間の活動結果
事業開始~当期末時点での増減差額の累計額
事業活動計算書は、法人の事業活動の成果(=純資産の増加)を把握すること目的とされています。
「サービス活動増減の部」・「サービス活動外増減の部」・「特別増減の部」・「繰越活動増減差額の部」の4つの区分に分かれております。
企業会計の「損益計算書」にあたります。
厚生労働省:社会福祉法人会計基準
第三節参照
貸借対照表
流動資産の部
固定資産の部
流動負債の部
固定負債の部
純資産の部
貸借対照表は、会計年度末におけるすべての資産、負債、純資産の状態を明らかにすることが目的とされています。
「資産の部」・「負債の部」・「純資産の部」の3つの区分に分かれており、さらに一年年基準や正常営業循環基準によって「固定資産」・「固定負債」と、「流動負債」・「固定負債」に分けられます。
資産の部の合計と、負債の部+純資産の部の合計は必ず一致します。
一年基準とは?
決算日の翌日から1年以内に入金または支払の期限が到来するかどうかにより流動資産/負債と
固定資産/負債を区分する基準のこと。
正常営業循環基準とは?
正常な営業サイクルによって生じた資産・負債を「流動資産」「流動負債」と区分する基準のこと。
厚生労働省:社会福祉法人会計基準
第四節参照
このように、社会福祉法人には作成する書類が数多くあり、専門知識がなければ複雑に感じることもあります。
本来の仕事に集中し、福祉サービスの質を向上するため、専門家に任せてみませんか?